労働問題800 解雇の規制にはどのようなものがありますか?

1.労働契約上の規制
 解雇権は、労働契約に当然に付随する権利と理解されており、普通解雇をするに当たり、就業規則の定めなどは必要ありません。しかし、常時10人以上の労働者を雇用する場合は、就業規則を定め、労働基準監督署に届け出なければならず、解雇事由は就業規則の絶対的必要事項であり、労働契約時に書面により明示しなければなりません(労基法15条1項、労規則5条1項4号)。
 他方、懲戒解雇は企業秩序の違反に対する制裁罰として行われるものであるため、労働契約において当然に予定されているものではなく、懲戒解雇を行う場合には、就業規則にその旨定め、労働者へ周知する必要があります。

2.業務上災害による療養中・産前産後の休業中の解雇の禁止
 労働者の業務上災害の負傷・疾病による療養のための休業期間、女性労働者の労基法65条に基づく産前産後の休業期間及びその後30日間は、その労働者を解雇することはできません。ただし、業務上の負傷や疾病が症状固定した以降は、他の解雇要件を満たす場合に限り、解雇することができるとした裁判例があります(光洋運輸事件名古屋地裁平成元年7月28日判決)。
 なお、解雇制限期間中の解雇については、懲戒解雇であってもすることができませんが(小倉炭鉱事件福岡地裁昭和31年9月13日判決)、解雇制限期間中の解雇予告は行うことができるとされています(東洋特殊土木事件水戸地裁龍ヶ崎支部昭和55年1月18日判決)。

3.打切補償による解雇制限の解除
 業務上災害による療養中の解雇制限は、使用者が労基法81条の打切補償を支払った場合に解除されます。この打切補償による解雇制限の対象となる「第75条の規定によって補償を受けている労働者」について、最高裁は、その保証が労災保険法に基づく療養補償給付及び休業補償給付によりなされている労働者はこれに該当しないとして、使用者による解雇を無効とした原審判決を差し戻し、このような労働者も打切り補償の対象になるとした上で、当該解雇の合理性、相当性の有無について審理することを求めました(専修大学事件最高裁平成27年6月8日判決)。労働者が労災保険から療養補償給付等を受けている場合でも、労基法に定める使用者の災害補償義務は、労災保険を通して実質的に行われており、使用者が自ら支払っている場合と区別する理由がないこと及び労働者は打切補償が行われた後も疾病等が治るまでの間は必要な療養補償給付等を受け取ることができ、労働者の利益保護を欠くことになるとも言い難いことを理由としています。

4.その他の主な解雇制限
・労働組合の組合員であること、労働組合への加入・結成、正当な組合活動を行ったことなどを理由とする解雇の禁止
・公益通報したことを理由とする解雇の禁止
・労基署等に対して、労基法違反の事実について申告や通報などを行ったことを理由とする解雇の禁止
・労働者が育児・介護休業の申出又は取得したことを理由とする解雇の禁止
・女性労働者が婚姻したことを理由とする解雇の禁止
・女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、妊娠・出産・産前産後休業の請求・取得、育児時間の申出・取得、妊娠・出産に起因する労働能率低下、その他妊娠・出産に関する理由での解雇の禁止
・妊娠中及び出産後1年を経過しない間に行う解雇の禁止

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