労働問題792 職務懈怠を理由として懲戒処分を行う場合のポイントを教えてください。

 職務懈怠とは、労働の遂行が不適切なことをいい、無断欠勤、遅刻、早退、職場離脱、勤務不良、業務命令違反等が含まれます。
 労働者による職務懈怠が客観的に認められるとしても、その原因や使用者の対応によっては、懲戒処分が無効になる場合があります。
 裁判例では、精神的な不調のために欠勤を続けている社員について、使用者としては精神科医による健康診断を実施するなどした上で、その診断結果に応じて必要な場合は治療を勧めた上で休職等の処分を検討し、その後の経過を見るなどの対応を取るべきであり、このような対応をとらずに労働者が無断欠勤したものとして諭旨解雇処分の措置を取ることは、精神的な不調を抱える労働者に対する使用者の適切な対応とはいえないとし、このような事情の下では労働者の欠勤は就業規則所定の懲戒事由の「無断欠勤」に当たらず、諭旨解雇処分を無効と判断したものがあります(日本ヒューレットパッカード事件最高裁第二小法廷平成24年4月27日判決)。
 また、業務命令違反について、業務命令は概念が広く、日常的な労働指示の他、配転・出向等の人事命令、時間外労働等の労働時間に関する命令、経営秩序の規律を目的とする命令等が含まれます。これらは、労働義務の不履行とも評価され、原則として懲戒事由に該当し得ると考えます。問題は、業務命令が有効であるという点のみで、懲戒事由該当性を基礎づけることが可能か否かということです。この点、「懲戒解雇に至るまでの経緯によっては、配転命令に従わないことを理由とする懲戒解雇は、なお、権利濫用としてその効力を否定されうる」とした上で、配転後の状況について十分な情報提供をしなかったことを理由とする懲戒解雇は権利濫用であるとした裁判例があります(メレスグリオ事件東京高裁平成12年11月29日判決)。一方、業務命令の効力を争うとともに、その態度を継続させた場合、業務命令が有効であれば、特に労働者の事情を考慮することなく懲戒処分を有効とした裁判例もあります(時事通信社事件最高裁第二小法廷平成12年2月18日判決)。

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