労働問題75 解雇が無効と判断され、解雇期間中の賃金の支払を命じる判決が出たところ、労働者代理人弁護士から、「債務名義があるのだから、源泉徴収せずに全額払って欲しい。」と言われています。債務名義があるかどうかと源泉徴収義務の有無は関係あるのでしょうか。

 使用者は、強制執行により賃金の回収を受ける場合であっても、源泉所得税の源泉徴収義務を負うとするのが最高裁判所第三小法廷平成23年3月22日判決なのですから、使用者が判決に従い任意に賃金を支払う場合は、当然、源泉徴収義務を負い、源泉所得税を納付しなければならないことになります。
 したがって、使用者としては、債務名義の有無にかかわらず、源泉徴収した上で、賃金を支払うべきこととなります。
 ただし、当該労働者が、源泉徴収しない金額での支払を強硬に主張し、源泉徴収額についても強制執行してきた場合は、「強制執行手続においては、執行債務者が徴収すべき源泉所得税を徴収する手続は予定されていないから、本件のように給与等の債権者がその債務名義に基づいて民事執行法122条2項により弁済を受ける場合には、源泉徴収されるべき所得税相当額をも含めて強制執行をし、他方、源泉徴収義務者は、強制執行により支払った給与等につき源泉徴収すべき所得税を納付した上で、法222条に基づき求償することになる。」(裁判官田原睦夫の補足意見)という手順を採らざるを得ません。
 そのようなことにならないよう、上記最高裁判例を労働者側に示して、源泉徴収額についてまで強制執行しないよう話し合っておく必要があります。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎


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