労働問題632 通勤時間、出張の移動時間、直行・直帰の移動時間は労働時間に該当しますか?

1.労働時間とは
 労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいいます。しかし、このような定義のみでは、具体的な事例において、労働時間にあたるか否かを判断することが難しく、裁判例でも、使用者による拘束の程度や具体的な活動内容を総合的に考慮し、使用者の指揮命令下に置かれていると評価できるか否かを実質的に判断しています。 

2.通勤時間の労働時間性
 通勤は、労働者が、労働力を使用者のもとへ持参するための債務の履行の準備行為であって、使用者の指揮命令下に入っていない労務提供以前の段階に過ぎないことから、通勤時間は労働時間に該当しません。
 裁判例では、労働者が会社の提供するバスに乗って寮と就業場所を往復していた時間について、「寮から各工事現場までの往復の時間はいわゆる通勤の延長ないしは拘束時間中の自由時間ともいうべきものである以上、これについては原則として賃金を発生させる労働時間にあたらないものというべきである」と述べられていることからも、単に通勤方法について一定の拘束を受けていたというだけでは、使用者の指揮命令下におかれているとは認められないのが通常です(高栄建設事件東京地裁平成10年11月16日判決)。
 また、別の裁判例でも、会社事務所と工事現場の往復は通勤としての性格を有しているため、労働時間に当たらないとしたものがあります(阿由葉工務店事件東京地裁平成14年11月15日判決)。
 このように、通勤時間の性質、使用者の指揮命令、労働者に対する拘束の程度のいずれの点からも、通勤時間は、原則として労働時間には該当しないということになります。 

3.休日に出張先に移動した場合の移動時間の労働時間性
 休日に出張先に移動した場合の移動時間が労働時間に該当するかどうかについて、行政解釈は、「出張中の休日はその日に旅行する等の場合であっても、旅行中における物品の監視等別段の指示がある場合の外は休日労働として取り扱わなくても差し支えない」としており、出張前後の移動時間は、業務性を欠き、通常は自由が保障されているから労働時間には該当しないとしています(昭和23年3月17基発461号、昭和33年2月13日基発90号)。
 休日に出張先に移動した場合の移動時間の労働時間性が認められるのは、例えば、出張の目的が運搬であり、移動中もその物品を監視しなければならない等、出張の移動そのものが業務性を有するような場合です。 

4.直行・直帰の移動時間の労働時間性
 直行・直帰とは、いったん会社に出勤し、そこから使用者の業務命令により作業現場や得意先などの目的地に移動すべきところを、会社を経由することによる無駄を省くため、直接自宅から目的地に移動し、また、目的地から直接自宅に移動することをいいます。
 実際の労務提供は目的地で開始されるものであり、目的地までの移動は持参行為と考えられ、労働者は移動時間中の過ごし方を自由に決めることができることから、使用者の指揮命令が全く及んでいない状態にあるため、労働時間には当たらないと考えます。 

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