労働問題629 残業代請求の訴訟における「付加金」とはどういうものですか?

 使用者が次の①~④の支払義務に違反した場合、裁判所は、労働者の請求により、使用者が支払うべき未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができます(労基法114条1項本文)。
 ① 解雇予告手当(労基法20条)
 ② 休業手当(労基法26条)
 ③ 時間外・休日・深夜労働の割増賃金(残業代)(労基法37条)
 ④ 年次有給休暇中の賃金(労基法39条7項)
 使用者が労基法上課せられた金銭給付の義務を履行しない場合、使用者に対して一種の制裁を課すことで、未払金の支払を確保しようとするのがこの付加金制度です。
 付加金を請求できるのは、上記①~④の支払義務に違反した場合に限定されるため、例えば、未払の賞与があったとしても、賞与について付加金を請求することはできないと考えられています。
 付加金の支払を命ずるか否かについては、裁判所の裁量に委ねられており、裁判所の命令があって、初めて付加金支払義務が発生することになります。
 したがって、口頭弁論終結時、つまり裁判所が付加金の支払を命ずる前に、使用者が労働者に未払金全額を支払った場合、裁判所は付加金の支払を命ずることはできなくなります。
 付加金の金額については、未払金と同額を上限として、使用者の労基法違反の程度・態様、労働者の不利益の性質・内容等の諸般の事情を考慮して決定されると考えられています(オフィステン事件大阪地裁平成19年11月29日判決、日本マクドナルド事件東京地裁平成20年1月28日判決等)。
 また、付加金の遅延損害金については、民事法定利率である年5%の割合で算定されます。起算日は、付加金の支払を命じる判決が確定した日の翌日です。
 このように、付加金の支払義務は、裁判所の判決の確定によって初めて発生するため、労働審判手続においては、労働審判委員会の審判が裁判所の判決とは異なる以上、労働者が付加金の支払を申し立てたとしても、労働審判委員会が審判によって付加金の支払を命じることはできません。

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