労働問題618 当社では36協定で定めた限度時間を超えて労働させることがありますが、問題ないでしょうか?

1 36協定の限度時間
 36協定には、延長することができる労働時間数を定める必要があります(労基法施行規則16条1項)。
 労働時間数に関しては、労基法36条2項において、「厚生労働大臣は、労働時間の延長を適正なものとするため、前項の協定で定める労働時間の延長の限度その他の必要な事項について、労働者の福祉、時間外労働の動向その他の事情を考慮して基準を定めることができる。」とされており、この基準を具体化したものが、「労働基準法第36条1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」です。この基準は、一般に「限度基準」と呼ばれています。
 限度基準では、36協定において定める労働時間数の上限(限度時間)は、次のとおりです。

一般の労働者
 期間    限度時間
 1週間    15時間
 2週間    27時間
 4週間    43時間
 1か月    45時間
 2か月    81時間
 3か月    120時間
 1年間    360時間

対象期間が3か月を超える1年単位の変形労働時間制の対象者
 期間     限度時間
 1週間    14時間
 2週間    25時間
 4週間    40時間
 1か月    42時間
 2か月    75時間
 3か月    110時間
 1年間    320時間

2 特別条項とは
 上記のとおり、36協定において「限度時間」が定められているものの、企業によっては、「限度時間」を超えて残業を命じざるを得ない状況が生じることも予想されます。
 限度基準3条1項ただし書きでは、その点に関し、「限度時間を超えて労働時間を延長しなければならない特別の事情(臨時的なものに限る。)が生じたときに限り、一定期間についての延長時間を定めた当該一定期間ごとに、労使当事者間において定める手続を経て、限度時間を超える一定の時間まで労働時間を延長することができる旨及び限度時間を超える時間の労働に係る割増賃金(残業代)の率を定める場合は、この限りでない。」と規定しています。
 このように限度時間を超えて労働させる旨の定めのことを、「特別条項」または「エスケープ条項」といいます。

3 特別条項に関する規制
 限度基準では、特別条項の適用対象を「特別の事情(臨時的なものに限る。)」と定めており、通達では、「『臨時的なもの』とは、一時的又は突発的に時間外労働を行わせる必要があるものであり、全体として1年の半分を超えないことが見込まれるものであって、具体的な事由を挙げず、単に『業務の都合上必要なとき』又は『業務上やむを得ないとき』と定める等恒常的な長時間労働を招くおそれがあるもの等については、『臨時的なもの』に該当しない」、「特別条項付き協定には、1日を超え3箇月以内の一定期間について、原則となる延長時間を超え、特別延長時間まで労働時間を延長することができる回数を協定するものと取り扱うこととし、当該回数については、特定の労働者についての特別条項付き協定の適用が1年のうち半分を超えないものとする」と述べられています(平成15年10月22日基発1022003号)。
 上記通達により「1年のうち半分を超えない」とされていることから、特別条項の適用が1年の半分を超えないように定める必要があります。
 また、特別条項において定める延長時間については、限度基準では特に示されていないため、労使の自主的な定め方によって定めることが可能です。もっとも、限度基準3条2項において、「当該延長することができる労働時間をできる限り短くするように努めなければならない」と規定されていることから、あまりに長時間の労働を許容する内容にならないよう留意する必要があります。
 割増賃金(残業代)の率については、限度基準3条3項で「当該割増賃金の率を法第36条1項の規定により延長した労働時間の労働について法37条1項の政令で定める率を超える率とするように努めなければならない」と定めていることから、限度時間を超える割増賃金(残業代)の率として、2割5分またはそれを超える率を36協定に定める必要があります。

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