労働問題59 試用期間中の社員は通常よりも緩やかな基準で本採用拒否(解雇)できますよね?

 試用期間中の社員の本採用拒否は、本採用後の解雇と比べて、使用者が持つ裁量の範囲は広いと考えられています。三菱樹脂事件最高裁昭和48年12月12日大法廷判決も、解約権留保の趣旨を「大学卒業者の新規採用にあたり、採否決定の当初においては、その者の資質、性格、能力その他上告人のいわゆる管理職要員としての適格性の有無に関連する事項について必要な調査を行ない、適切な判断資料を十分に蒐集することができないため、後日における調査や観察に基づく最終的決定を留保する趣旨」と捉えた上で、試用期間における留保解約権に基づく解雇(本採用拒否)は、通常の解雇と全く同一に論じることはできず、通常の解雇の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められてしかるべきものと判示しています。
 もっとも、同最高裁大法廷判決は、試用者の本採用拒否は、「解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許される」と判示しており、本採用拒否(解雇)に客観的に合理的な理由があることを証拠により立証できなければ本採用拒否(解雇)することができないことは、通常の解雇と変わりありません。
 本採用拒否(解雇)に客観的に合理的な理由が必要ということは、使用者が主観的に本採用するに値する人物ではないと判断したというだけでは足りず、裁判官の目から見ても本採用拒否(解雇)を正当化できるだけの事情が存在することを証拠により証明することができるようにしておく必要があることを意味します。
  本採用拒否(解雇)の有効性が緩やかに判断される
 ≠本採用拒否(解雇)に客観的に合理的な理由が不要
 ≠本採用拒否(解雇)に客観的に合理的な理由があることを証明するための客観的証拠が不要
 抽象的に勤務態度が悪いとか、能力が低いとか言ってみたところで、あまり意味がなく、具体的に、何月何日に、どこで、誰が、どのように、何をしたのかといった事実を客観的証拠により認定できるようにしておく必要があります。客観的証拠確保の方法としては、例えば、試用期間中の社員は、毎日、日報に反省点等を記載させることとし、指導担当者がコメントする等といった方法も考えられます。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎


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