労働問題554 残業代の消滅時効期間について教えて下さい。

 残業代の消滅時効期間は,当面の間は3年(2020年3月31日までの給料日に支払われるべき残業代は2年)です。
 2022年3月31日までに残業代請求を受けた場合は,過去の残業代の消滅時効期間が2年であることを前提とした対応をすれば足りますが,2022年4月1日以降に残業代請求を受けた場合は,2020年4月1日以降の給料日に支払われるべき残業代の消滅時効期間は3年に延長されていることを理解した上で対応することが必要となります。
 消滅時効期間の起算点は,各賃金支払日の翌日です(「類型別 労働関係訴訟の実務 改訂版 Ⅰ」262頁参照)。
 消滅時効期間を経過している残業代については,消滅時効を援用します。消滅時効の援用が認められた残業代については,支払義務がなくなります。
 内容証明郵便等で残業代の支払を催告された場合,その時から6か月を経過するまでの間は,消滅時効の完成が猶予されます。残業代の支払を催告された場合であっても,催告から6か月以内に労働審判の申立てや訴訟の提起等がなされなかった場合は,消滅時効完成猶予の効力が消失することになります。したがって,内容証明郵便等で残業代の支払を催告された場合,通常は催告から6か月以内に労働審判の申立てや訴訟の提起等がなされることになります。仮に,催告から6か月以内に労働審判の申立てや訴訟の提起等がなされなかった場合は,消滅時効が完成している残業代があるかもしれませんので,消滅時効の援用を検討して下さい。
 未払残業代の存在を承認した場合は,消滅時効の進行がリセットされます。消滅時効期間は,承認したときから3年(2020年3月31日までの給料日に支払われるべき残業代は2年)となります。どういった事情があれば,未払残業代の存在を承認したといえるかは問題となり得ます。事案ごとに丁寧に検討して下さい。
 従来は,残業代の消滅時効期間が2年,不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効期間が3年だったことから,3年分の未払残業代相当額について不法行為に基づく損害賠償請求が行われることがありましたが,特別な事情がない限り請求が認められないこともあり,件数としてはそれほど多くはありませんでした。2020年4月1日以降の給料日に支払われるべき残業代の消滅時効期間が3年に延長されたのに伴い,不法行為に基づく損害賠償請求はさらに減ることが予想されます。


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