労働問題285 残業代(割増賃金)の支払を命じる判決が出たので、所得税等を源泉徴収して支払おうとしたところ、労働者側代理人から、「債務名義があるのだから、源泉徴収せずに全額払って欲しい。」と言われました。債務名義があるかどうかと源泉徴収義務の有無は関係あるのでしょうか。

 使用者は、強制執行により賃金の回収を受ける場合であっても、源泉所得税の源泉徴収義務を負うとするのが最高裁判所平成23322日第三小法廷判決なのですから、使用者が判決に従い任意に賃金を支払う場合は、当然、源泉徴収義務を負い、源泉所得税を納付しなければならないことになります。したがって、使用者は、債務名義の有無にかかわらず、源泉徴収した上で賃金を支払う必要があります。
 もっとも、当該労働者が、源泉徴収しない金額での支払を強硬に主張し、源泉徴収額についても強制執行してきた場合は、「強制執行手続においては、執行債務者が徴収すべき源泉所得税を徴収する手続は予定されていないから、本件のように給与等の債権者がその債務名義に基づいて民事執行法1222項により弁済を受ける場合には、源泉徴収されるべき所得税相当額をも含めて強制執行をし、他方、源泉徴収義務者は、強制執行により支払った給与等につき源泉徴収すべき所得税を納付した上で、法222条に基づき求償することになる。」(裁判官田原睦夫の補足意見)という手順を採らざるを得ません。そのようなことにならないよう、上記最高裁判例を労働者側に示して、源泉徴収額についてまで強制執行しないよう話し合っておく必要があります。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎


YOTSUYA-KOJIMACHI LAW OFFICE

K-WING Bldg. 7F
5-2 Kojimachi, Chiyoda-ku,
Tokyo 102-0083 JAPAN
TEL. +81-03-3221-7137

Copyright ©I solve the labor problems such as the issue of lawyer corporation Yotsuya Kojimachi law office employee, discharge, the retirement trouble, overtime pay request, a labor umpire, group negotiations with company management's lawyer. I cope with online consultation. All Rights Reserved.

弁護士法人四谷麹町法律事務所

〒102-0083 東京都千代田区麹町5丁目2番地 
K-WINGビル7階 TEL:03-3221-7137

Copyright ©弁護士法人四谷麹町法律事務所 問題社員、解雇・退職トラブル、残業代請求、労働審判、団体交渉等の労働問題を会社経営者側弁護士と解決。オンライン相談に対応。 All Rights Reserved.
Return to Top ▲Return to Top ▲