労働問題180 有期労働契約者の雇止めに労契法19条が適用された場合、雇止め制限の判断基準は正社員の解雇の判断基準と同じですか。

 有期労働契約者の雇止めに労契法19条が適用されるといっても、雇止め制限の判断基準は正社員の解雇の判断基準とは異なり、正社員の解雇と比較すれば、緩やかに客観的に合理的な理由や社会通念上の相当性が認められます。
 例えば、日立メディコ事件最高裁昭和61年12月4日第一小法廷判決は、業績悪化を理由として人員削減目的の雇止めがなされた事案に関し、「右臨時員の雇用関係は比較的簡易な採用手続で締結された短期的有期契約を前提とするものである以上、雇止めの効力を判断すべき基準は、いわゆる終身雇用の期待の下に期間の定めのない労働契約を締結しているいわゆる本工を解雇する場合とはおのずから合理的な差異があるべきである。」とした上で、「独立採算制がとられている被上告人の柏工場において、事業上やむを得ない理由により人員削減をする必要があり、その余剰人員を他の事業部門へ配置転換する余地もなく、臨時員全員の雇止めが必要であると判断される場合には、これに先立ち、期間の定めなく雇用されている従業員につき希望退職者募集の方法による人員削減を図らなかつたとしても、それをもつて不当・不合理であるということはできず、右希望退職者の募集に先立ち臨時員の雇止めが行われてもやむを得ないというべきである。」と判断しています。
 また、日本航空事件東京地裁平成23年10月31日判決は、「解雇権濫用法理が類推適用されると、一般的にいえば、雇止めが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には権利の濫用として無効となることになる(労働契約法16条)が、雇止めの場合において、雇用契約の内容としては、契約期間が定められ、その期間が経過することにより雇用契約が(ママ)終了が合意されている事案ということができるから、雇止めが『客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない』かどうかの判断に当たっては、解雇権濫用法理が当然に適用される期間の定めのない雇用契約の場合と同一とはいえず、当該雇用契約の性質、内容を十分に考慮した上での判断が求められるというべきである。」と判示しています。
 もっとも、正社員の解雇よりも緩やかといっても、客観的に合理的な理由や社会通念上の相当性が必要なことに変わりありませんので、経営者が主観的に雇止めに合理的な理由があると判断しただけでは足りませんし、通常はこれらを証明するための客観的証拠が必要となることに変わりありません。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎


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